―業務プロセスの可視化の重要性―
会議のプロセスの監査による改善事例中小企業診断士
塩見 之郎
1.中小企業の業務プロセス見直しの現状
2018年度の中小企業白書(図表1)によれば、中小企業は人手不足等の課題を持っており、その改善策として、生産性向上への取り組みが必須となっています。生産性の向上には業務プロセスの見直しが鍵となり、IT化を進めるうえでも大前提となっています。現在何らかの形で業務見直しを行っている企業は86.2%、特段、業務の見直しは行っていない企業は13.8%です。大多数の中小企業が、業務見直しの取組を行っていることが見て取れます。
図表1「業務見直しの実施状況と取り組み単位」
2.内部監査の利活用による生産性向上の意義
内部監査は、経営層の指揮のもと業務の有効性/効率性や不正の未然防止等の内部統制強化のために監査を行う機能です。独立的・客観的な立場から業務プロセスを可視化し、改善の助言、改善実施のフォローをするため、自部門で実施するよりも改善の実現を高める傾向にあります。 本テーマでは、内部監査や内部統制によるアプローチから、業務プロセスの見直しを実施し、生産性向上を成しえた企業の事例を3回シリーズで解説いたします。第一回目は会議体、第二回は人手不足での労務管理、第三回目は稟議書の監査から内部統制といたします。
3.会議プロセスの改善事例
(1)背景
経営トップから、意思決定のスピード化を含め会議の有効化、効率化を目的に、現状の経営会議等主要な会議のプロセスの現状を監査し、改善の提言の要請が内部監査部門にありました。
(2)会議プロセスの監査結果の改善事項
監査結果と改善事項は下記のとおりです。
(3)改善後の結果
経営トップ自ら上記の改善事項を率先して実施し三か月後には下記の結果となりました。
4.まとめ
実質的な生産性向の成果としては、上記の通り会議の質と量(時間)の改善ができました。また、主要な会議体の出席メンバー間において本音で語れるコミュニケーションが確立できたことです。以前は、言いたいことを言えない重苦しい雰囲気の会議がありましたが、改善事項として、議論する、指示事項をその場で確認・コミットして共通認識とする、その進捗を会議の場で報告・確認するなどを徹底することで、コミュニケーションを促進することができました。これは、内部統制の基本でもあり、統制強化にもつながりました。
以上