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知財に取り組む

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中小企業診断士  籔田安之

 本稿の目的は、企業の生産性向上に向けて、知財をわかりやすい言葉で伝え、興味を持ち、行動の動機付けすることです。知財の効果はまだまだありますが、少しでも面白さを感じ、知財に興味を持った人がまずできることが何かを記します。どんな取り組みをすれば良いのか。知財に関する活動を行う際の考え方も述べておきます。

 知財活動は3つの段階に分かれます。

・創造:様々な活動によって、いかに、新しい知財が生み出されるか
・保護:新たに生まれた知財を、どのようにして自社の財産にするか
・活用:財産とした知財を使って、どのようにビジネスを展開するか

 創造から保護へ、保護から活用へ、これらの繋がりを『知財プロセス』と言います。
創造から活用への一方向の流れではなく、活用した知財が更に新たな知財を生みだす循環する考え方は『知財サイクル』、または『知財創造サイクル』と呼ばれています。

 創造段階では、知財の裾野を拡げること。社内で知財に関わる人が増え、知財をもっと自由に語ること。漫然と社内にあるものを、知財を軸に会社の財産にしていくことが重要です。開発担当に他社技術や業界の動きを伝える知財担当がもっと多くなってほしいと思います。

 保護段階では、知財をいかに守るのか考えること。公的に権利として守るのか、私的に社内のルール等で守るのか、専門家と一緒に方針を定め、戦略や戦術がぶれないことが大切です。自らやればコストは安くすみますが、優れたプロは報酬以上の成果をもたらしてくれます。

 活用段階では、知財を使ってもっと攻めること。技術をお金に換える意識を持つこと。自社の知財を見つめ、強みと弱みを認識します。知財を通した連携や革新の可能性は想像以上に沢山あります。変化の激しい時代、機会と脅威を捉え、新たなチャンスを探しましょう。

 知財活動の理想形をあまり高く掲げると、現場に定着せず、中断してしまうことが多々あります。無理なく長続き。自社にあった水準を見つけ、時間をかけて、少しずつ育ていきます。特許には期限がありますが、商標は一つの企業がずっと使い続けることができます(商標権の有効期限は10年ですが何度でも更新できます)。長い間使われてきた商品名、古い商標が強いブランドとなるように、知財を会社に根付かせ、活動を止めないことです。

 大企業とは異なり、経営資源に限りがある中小企業では、知財活動を社内で完結することには無理があります。社外に居る様々な専門家を上手に活用することが成功の鍵と言えます。といっても専門家に任せきるのではなく、当事者意識を持って仕分けすることです。

・自社として自ら取り組むこと:知財を学び、実現したいビジョンや目標を定めること。
・無料の専門家に依頼すること:一般的な知識を取得する、知財の疑問を解消すること。
・有料の専門家に依頼すること:経営に関係する重要な判断の精度と速度を上げること。

 健全な知財を身につけるには、自らの体力作りと知財の『かかりつけ医と専門医』が必要ではないでしょうか。医療における健康づくりと治療に似ているかもしれません。

 経営と知財を近づけること。経営は経営、知財は知財と割り切るのではなく、いかに経営に役に立つ知財を生み出すか。裏返すと経営や事業に関係ない知財を生み出さないか。そんな考えが広まってきています。知財が身近な経営者は増えつつあるように感じます。

経営者と知財のつながり。会社にとって知的財産権を取得する動機は様々です。

・表札型:まずは自社に技術があること、会社の存在を知らせたい
・記念碑型:せっかくの開発を記録に残したい。共同の成果を祝したい
・天守閣型:自社の技術がいかにすごいかを誇りたい。褒めてもらいたい
・打上花火型:自社の技術をもっと広く世の中に伝え、人や企業を集めたい
・パスポート型:海外進出にあたって、必要と言われたから。安心のために

この他にも、良いもの、悪いもの、様々な型があります。
あなたの会社の知財はどんな型と言えますか。

 知財が企業の生産性向上にどのように役に立つか、知財の専門家ではない筆者が、これまでの経験から私見を含めて述べてきました。内容の正確性やニュアンスについては議論の余地があるかと思います。もし本稿の内容に違和感があれば、それを身近にいる知財に詳しい人に尋ねてみて下さい。きっと知財の理解に向けて、新たな一歩になるはずです。

(文責:籔田安之)

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