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使えるデータ活用 第1回 今、なぜデータ活用か

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中小企業診断士 福田 美詠子

◆データ活用の必要性

 働き方改革が叫ばれています。特に中小企業の一部では、一人当たりの業務量が過重になって辞める社員が増え、高騰する人件費を負担しかねて一層人手が足りなくなるという悪循環が発生しています。働き方を変える必要がありますが、切り札として期待されているのが、IT* 1です。
 ところが、日本企業によるIT活用は期待ほどには進んでいません。一方、世界的規模でデジタル技術を活用したビジネスの変革が進んでおり、破壊的イノベーションをもたらすといいます。このデジタルトランスフォメーション(DX)に対する日本企業の対応が遅れて、このままでは2025年には経済損失が年12兆円にも及ぶ恐れがあると(「2025年の崖」)、経済産業省が警告しています* 2 。
「ITにはお金がかかる」「技術陳腐化が激しく、様子を見てからでも」などの声を聞きますが、それは大体、ハード(機器)やソフト(プログラム・アプリケーション)のことを指しています。DXではむしろ、コンピュータで扱えるようにデジタル化された情報、すなわちデータを活用できているかが問われます。ハード・ソフトの発達により、従来は不可能だったデータ活用ができるようになることがビジネスにインパクトを与えます。
 まして日本では、経営資源としてのヒトが希少化しています。若年人口は減っているのに、人手が安価だった時代のままの労働集約型業務になっていませんか。対して経営資源としてのデータは、指数的に増えて入手コストも下がっていますから、データを活用できた企業は有利です。しかも、データを活用することで生産性の向上が見込め、レバレッジが効いてきますから、着手が遅れればライバルとの差は開く一方になりかねません。

◆生産性向上のヒント

 AIなどを取り入れたデータ活用により、中小企業で人手不足を解消できた事例も出てきています。パン屋のレジにセンサとAI、IoTを取り入れた「BakeryScan(ベーカリースキャン)」は*3 、トレイに載った複数の無包装のパンを画像認証して種類と値段を瞬時に識別します。いままではレジで店員が種類と価格を覚えるのが大変でしたが、導入後はレジ業務の要員を半減できるなどの効果が上がっています。
 生産性とは、投入した資源からどれほどの産出物があったか(産出÷投入)のことですから、要員削減となったベーカリースキャンの導入は、生産性の向上です。パン業界の企業なら、そういうITが出ていると知らないよりは知っているほうがいいでしょう。さらに、POSに蓄積された販売データを分析し、どんな時間帯に購入が多いか、どのパンが売れ筋か、単品ごとの利益率は充分か、などを把握して、現場の業務運営や経営判断に活かしていくことが生産性向上につながります。


* 1 Information Technology:情報・通信に関する技術
* 2 経済産業省『DX(デジタル変革)レポート』2018年9月
* 3 開発は株式会社ブレイン(兵庫県西脇市)。出所:野竿健悟「AIは難しいものではない―開発企業に聞く導入と効果」中小企業診断協会『企業診断ニュース』2019年5月

◆データ活用の7つの型

 一口にデータ活用といっても、範囲が広すぎて漠然としています。データ活用そのものを類型化し、その組合せとして捉えることで、応用が利きやすくなると思います。学校の教科に対応する次の7つに分けることができ、それぞれに現在ホットな技術があると考えられました。
① 言語型、②体育型、③家庭科型、④理科型、⑤芸術型、⑥数学型、⑦社会型
 たとえば、ベーカリースキャンの画像認識は、①の技術であるセンサに⑥のAIを組み合わせて、これまでは難しかったデータ入力を可能にしています。センサからデータをPOSにつないで会計をする機能は②です。蓄積データ分析は④に当たり、経験と勘を超えた「データドリブンによる科学的経営」といわれる型です。
本稿では、データ活用の7つの型を解説し、要所に「すぐに利活用できる生産性向上策」を紹介していきます。

次の記事

使えるデータ活用 第2回 データ活用の7つの型①②

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