ビジネス
 

知財をもっと使う

この記事は約4分で読めます。

中小企業診断士  籔田安之

 知財が企業活動にもたらす様々な効果。知財がビジネスにいかに役に立つかについて、もう少し具体的にしていきます。知財を活用した成功に到るアイデア、失敗を回避する方策など、生産性向上に向けた手掛かりを書こうと思います。

【企業を探す】

環境変化が激しく生き残りが難しい時代に、自社の周りにはどんな企業が居るのか。周囲を見渡す時に知財は役に立ちます。技術を表すキーワードを検索してみると、発明の名前や会社名(場合によっては個人名)がリストとして表示されます。一般名は多く固有名は少ない検索結果が出ます。検索ワードをどう選ぶか、望んだ結果に早く到るにはコツがいりますが、検索のプロセスで出会う様々な企業や技術にも閃きのヒントがあります。

 自社が開発中の技術と、全く同じ技術が特許の中に見つかったならば、内容を見直さなくてはなりません。商標を見つけた場合は変更する必要があります。開発変更や使用中止はまだいい方です。知財トラブルで恐いのは、他社の知財を見逃したことで『他社の権利を侵害すること』です。開発に投資した費用と時間が無駄になり、侵害した事に対して賠償しなくてはなりません。近年、日本でも賠償額は増加の一途を辿っています。

 見つかるのは技術や商品、ターゲットも同一で敵となる『競合企業』だけではありません。自社技術と組合せ、新たな製品を生み出す関連技術を持ち、味方となる『連携企業』も見つかります。一社単独では難しくても、複数企業が力を合わせれば成功に到ることができる、そんな時代だと考えます。共同開発とって、知財は不可欠な要素です。

 自社では開発できなかった先行技術を持つ企業を見つけることもあります。新たな技術を開発する際には、先人の知恵を借りるのも成功への近道です。そんな企業にアプローチする時に知財情報は役に立ちます。ほとんどの特許には代理人として弁理士の名前が載っています。企業に表口から直接連絡するよりも、弁理士を経由した方が成功の確率が上がります。「○○弁理士が担当の○○社の○○という技術についてお話がしたいのですが」

 これからは日本だけではなく、海外の企業を知る、国際連携する時代が来るのではないでしょうか。そんな時にも知財は役に立ちます。知財制度は国際的に繋がりがあり、分類方法には統一したルールがあります。ここ数年のAIの発達はめざましく機械翻訳は相当に進化しています。言葉が難しい場合は技術に添えられた図面も手掛かりになります。画像認識技術によって検索スピードは確実に上昇しています。知財を通じて国際的な成功を掴む企業がどんどん出現する。海外には企業の成長余地はまだまだ沢山あります。

 【傾向を見る】

優れた技術を見つけた後、その企業を更に深く知るためにも知財は役に立ちます。企業名で検索をかけ、知財が複数あった場合には、特許の中身ではなく全体を見てみましょう。どんな知財を持っているかによって経営スタイルが見えてきます。商標が多い場合、意匠が多いケース、ビジネスモデルによって保有する知財は異なります。細部に注目するのではなく、全体を俯瞰して見ることが大切です。

 時期に注目して見ると企業の盛衰が見えてきます。急に勢いが出てきた企業は、特許が出願された時期と量(と質)によって、技術がいつ確立したかがわかります。また、以前は意欲的に特許出願をしていた企業が最近になって出願数が減った場合、資金が不足した、人財が流出した、経営方針が変わった等、変化の予兆が読み取れます。

 人に注目してみると経営者の人に対する考え方が見えてきます。発明者の欄に多くの名前が並んでいるケースは知財を自社で長く保有し、チームの士気を高める意図があるのかもしれません。一方で発明者が一人の場合は、知財を自社で活用することにこだわりを持たず、他社に譲渡し利益を得ることを計画しているのかもしれません。

 商標は分野を指定して登録する必要があります。同じ商品名でも分野が異なれば使うことができます。分野の番号に応じて登録するので、広い範囲をカバーするには多くのお金がかかります。全てをカバーする商標は不合理なので、商標が登録されている分野を知ることで、企業が展開しようとしている事業の範囲を知ることができます。

知財を通して、企業を外から知る方法の一端を記しました。
次は『市場を知るための知財』が続きます。

(文責:籔田安之)

BANNER リンク
タイトルとURLをコピーしました
Close Bitnami banner
Bitnami