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使えるデータ活用 第10回 DX(経済のデジタル化)の影響③

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中小企業診断士 福田 美詠子

3. DXの影響

(3)DXへの対応の方向性

◆プラットフォームビジネスの遅れをIoTプラットフォームへの取り組みで挽回へ

 日本のDXへの対応について、方向性を考えてみましょう。
GoogleやAmazon、Twitterなどのプラットフォームビジネスで出遅れていることは、日本の大きな懸念点です。プラットフォームは⑦社会型データ活用で、各種取引や個人情報を含む膨大なデータを飲み込んでおり、後発が対抗するのは目下難しいからです。
 しかし、これまでのプラットフォームは基本的に人間と人間をつなぐものでした。対して現在IoT(含:M2M*17)のモノとモノをつなぐネットワークが急速に立ち上がってきています。データは価値再現の核ですが、現実界ではデータだけで価値が再現できるわけではありません。素材や道具が必要ですから、モノづくりは不可欠です。
 モノづくりに強い日本は、IoT、とりわけハブとなるIoTプラットフォームにおいて不動の地位を獲得することに、国を挙げて取り組んでいくことが考えられます。通信技術は5Gが連想されますが、先行のLPWAによるネットワークも見逃せません。①言語型のセンサやタグ、②体育型のアクチュエータやロボット、⑥数学型のAIも組み合わせて社会的なインフラとしていき、物流やエネルギーで人間活動に接続するイメージになります。海外の動向でも、製造業だけではなく、エネルギー・運輸・公共・ヘルスケアといった領域が対象とされています*18 。

 IoTをユーザー企業が独自に導入することはできますが(ECにおける自社サイト販売に相当)、高速性・信頼性・セキュリティで厳しい運用が求められます。中小企業も導入・運用するためにはIoTプラットフォーム*19 に接続すれば簡便に使えるようにすることが近道と思われます(ECにおけるAmazonや楽天への出店に相当)。IT・データの世界は指数的成長の下にあって勝者総取りになる傾向が現実界以上に強いため、IoTに限らずFintech*20・AIや各種アプリなどの要素技術や基盤は、ユーザー企業が独自に導入・開発・保有するより、使用・シェアという考えを入れていかないと、仕様の乱立・ユーザー格差の拡大・欧米企業のスタンダード化を招く恐れがあります。

◆人間のネットワークでは、ユーザーの分権的運営を可能にする第3極のルール作りを

 人間と人間をつなぐネットワークについては、第3極を生むルール作りに取り組んでいくことが考えられます。GAFAに代表される競争的・データ集権的なアメリカなどのIT産業のやり方を第1極として、現在中国などで進む監視・統制に長けたITの活用法が第2極となりつつあります。あともう1つの極が存在する余地があり、おそらくユーザー側に力がある、分権的な運営をするスタイルと思われます。
 現実界の歴史でも、古代専制国家では皇帝に権力が集中していたための弊害が多く、三権分立へと発展してきました。民主主義の軍隊では、シビリアンコントロール(文民統制)が基本です。権力は分掌して牽制しあうべきだということは、歴史の教訓です。資本主義ではカネの総量がある程度コントロールされていましたが、データは爆発的に増大していきますから、データを持って使う特定の企業・団体に権力が集中すると、牽制できる存在がいなくなりかねません。
 ここに、集合的ユーザーの重要性がクローズアップされてくることになります。個人情報保護、同調圧力の強い実社会に対するSNSなどでの自由・品格・安全を考えると、何らかの形である程度の匿名性を認めることも必要と思われます。たとえば、SNSで筆名・アバターの利用を認める、企業が利用するデータ分析は個人情報を外して統計的に処理する、個人を特定する販促ではなくて項目クリックなどの動作に反応する販促を採用する、などはどうでしょうか。一方で、アバターならば何をしてもよいというわけではありませんので、アバターの信用やそのアバターでの活動歴の長さを表示することも検討されるでしょう。ただし、検閲は好ましくありません。
 そして、ベンダの運営についてユーザー側で牽制する仕組を考え出していくことです。この仕組の構築には、カネとデータのバランスや、セキュリティ、ブロックチェーン、仮想通貨、ポイントサービスなどが重要かもしれません。

倫理性を備えた多様性の尊重が、第3極のキーワードになると思われます。


*17 Machine to Machine:機械同士が直接コミュニケーションをして動作する仕組。IoTとは別ものとされることも多いが、ここではIoTに含まれる概念として扱います。
*18 鍋野敬一郎「IoT先行企業の狙いを見極める。第3回:米国GE社『インダストリアル・インターネット』の狙いと戦略を探る
https://www.hitachi-solutions.co.jp/belinda/sp/special/column15/page03.html
* 19  IoTプラットフォームの提供社は、IBM・GEなどの外資、OPTiMなど、国内外合わせて700社以上あると言われています。OPTiM「IoTプラットフォームとは? プラットフォームの種類比較と選び方のポイント」 https://www.optim.cloud/blog/iot/iot-platform-sorts-and-functions/
* 20 financial technologyの略。金融と技術の組合せ。

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