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使えるデータ活用 第9回 DX(経済のデジタル化)の影響②

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中小企業診断士 福田 美詠子

3 DXの影響

(2)日本ですでに起こっている変化

◆カネがデータに置き換わっていく

 DX(経済のデジタル化)により、カネがデータに置き換わる可能性を指摘しました。すでに日本でもその方向に変化が起きています。  データにより価格が破壊的に低下していく現象は、情報そのものを商品とするコンテンツ業界で顕著にみられます。音楽、出版、学術、報道、放送、広告、旅行など、多くの業界が変革の波にさらされています。  また、SNS、動画配信やシミュレーション、ゲーム、VR・AR等によって、体験の疑似化が広まっています。これは⑤芸術型データ活用によるもので、たとえば、投稿された動画で話題のスポットの雰囲気を味わう、ドライビングシミュレーターで、スポーツカーをサーキットで操る疑似体験をする、などです。

◆使ってすぐにネットで売る、モノを持たない賢い消費者

 モノを商品とする業界でも、デジタルの仕組に支えられた中古品流通およびシェア(共有)が拡大しています。レンタル業界は企業が新品を購入して消費者に貸し出すビジネスモデルですが、消費者が購入して使った中古品を売りに出す、リユースの中古品流通が目立ってきました。メルカリ(㈱メルカリ、東京都港区)は、消費者間の直接売買の場を提供するフリーマーケットのプラットフォームビジネスで、学生や主婦のお小遣い稼ぎに使われています。最新流行の洋服を買って数回着たら売りに出すと、最初の出費から何割かが回収でき、流行遅れになる前に処分するのでクローゼットの中も片付きます。中古品を買う側も、安いモノを納得して使えます。良いモノを安く使い、管理保管廃棄の手間とコストは圧縮し、資源を回してエコにも貢献する、いいことづくめの賢い消費者になれます。これは、典型的な⑦社会型のデータ活用の事例です。  所有よりも使用という中古品流通やシェアの拡大は、メーカーと新品販売の流通業の売上を縮小させますが、自動車業界のレンタカーやカーシェアリング、新古車、建築の中古マンションやシェアハウス・シェアオフィスなど、高額商品でも見逃せなくなっています。今まではプロの間でしかキャッチできなかった情報が、データ化により、一般でも検索できるようになっているわけです。

◆ポイント・クーポン、相場データ…、下がる実売価格

 カネが担っている交換手段と類似した機能に、データが使われる現象も当たり前になりました。まず、ポイントサービスやクーポンが挙げられます。同じ価格のモノでも、クーポン発行やポイント還元によって実質的な値引きが行なわれています。使われる範囲がクローズされていることや、有効期限があることから、通貨ではないとされていますが、通貨に色を付けてデータに置き換えられたカネとして捉えるほうが大事だと思います。  また、取引相手の信用や商品の品質を保証する仕組も、口コミや「いいね!」数、フォロワー数、Google検索結果の上位表示といったデータにシフトしています。ネットの口コミには、買う前に他の人の使用体験を確認することで、要らないものを買わずに済ますリデュースの効果もあります。  さらに、価格比較サイトや複数社同時見積サイトにより相場のデータが出回り、値付けの妥当性が消費者に評価されるようになりました。店頭でモノを確かめ、最安のサイトで買う動きもあります。

◆若者の転職が増えるのも、世間の当たり前を知って自社と比べるから

 仕事を探す労働市場も、データ化によって急速に流動化が進んできました。特に若年層で転職が普通になってきましたが、これまでは自社内でクローズされてきた労働環境についての情報が入手できるようになってきたことが影響しています。個別の企業の労働環境というより、世間で当たり前とされている労働環境についての情報がSNSなどで出回り、「ウチの会社は普通ではない」という思いを抱く、企業名は伏せながらも体験をSNSで問いかければ「おかしい」「ブラックだ」とコメントが付いて確信に変わっていく、という循環が起きています。そして、転職サイトで簡単に求人情報や企業情報が手に入ります。
 フレックスや在宅勤務などの制度整備はもちろん、平均残業時間、育児休業の利用率、入社3年目の定着率、従業員の満足度といった実際の運用の数値が問われ、データとして労働環境が比較されます。働き方改革が求められる理由がここにもあります。

   自社が変わりたくなくても、市場が変わっていくのです。

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