簿記

シブサワ、簿記の重要性を説く 2

この記事は約3分で読めます。

石島公認会計士事務所
公認会計士・税理士
石島 慎二郎

「それで、今どんな感じじゃ?あー、サワムラ……」

「レンです。」

ひとまず自己紹介する。

「そうか、レンよ。会社の経営状態はどうじゃ?」

シブサワに唐突に聞かれ、困ってしまう。

「経営状態、ですか……正直、さっぱりわかりません。

とりあえずおじいちゃんの代わりをしようと思って来ただけで……。」

「おまえさんなぁ、それでどうするつもりだったんじゃ?会社の今の状況を知らずして、
何とする?何が良くて、何が悪いのか。それを知らずして、どうするつもりなんじゃ。」

畳みかけるように言われるが、何も言い返せない。

「いや、その、とにかくこの本屋を何とかしたいと思っただけなので……。」

「その気概や良し。だがなレンよ、先にも言ったが現状を知らずして改善は望めん。

まずは会社の決算書を見るがよい。」

「決算書、ですか?」

そういえば、先ほど書類を整理している中で、そんなものを見た気がする。

そう思い書類の山をかき回してみると、決算書類在中と朱書きされた封筒が見つかった。

「シブサワさん、これですか?」

「うむ、中を見てみるが良い。」

<決算書の例>

「あの~自分にはさっぱりで……。」

「レンよ、これが決算書、会社の状況を映す鏡じゃ。

これがわからないということは、会社の状況が見えていないということじゃ。

おまえさんは決算書を読めるようにならねばならん。

よいか、決算書は取引を帳簿に記録することで生み出される。

つまり、帳簿の記録のやり方、

『簿記』がわからねば、決算書がわからぬ。

決算書を知れ、そのためには簿記を知れ、じゃ。」

「はい……。」

まだぼんやりとしているが、シブサワの言葉には真実の重みがある気がした。

「だが今はわからなくて当然。ひとまずは、決算書は損益計算書と貸借対照表の2つと知れ。

損益計算書は、どれだけ会社がもうかっているかを示す。

損益計算書の左下の『当期純利益』とあるな?これが会社のもうけじゃ。

つまり、じいさんの本屋はもうけがあるのじゃよ。」

もうかっている――それを聞いたレンは目の前が明るくなった気がした。

「一方で、貸借対照表は会社の財政状態を表すのじゃが――それはまた後にしようか。

ここで大事なのは、損益計算書と貸借対照表の一番下の『合計』部分じゃ。」

「損益計算書は合計が右も左も2,500。貸借対照表は合計が右も左も205。

たまたまぴったり合っていますね。」

「これはたまたまではない。損益計算書も貸借対照表も、必ず左右の合計が一致する。

一致していなければどこかに間違いがあるということよ。」

「なぜ必ず一致すると言い切れるのです?ずれることだってありそうじゃないですか。」

「それが簿記のミソなのじゃよ、レン。簿記は必ず右と左に記録するのだ。」

簿記のポイントは右と左が必ず一致すること――これはいったいどういうことなのか。

レンはシブサワの話に次第に引き込まれていった。

BANNER リンク
タイトルとURLをコピーしました
Close Bitnami banner
Bitnami